ショコラ~恋なんてあり得ない~
鼻息を一つ荒くつくと、優柔不断男が笑ってる。
「……何よ」
「いや、面白いなぁと思って。仲いいんだね、彼氏?」
「そんなんじゃないです。今のはマサです。職場仲間なだけ」
「詩子さん彼氏いないの?」
「いな……いない、です」
何だかそれを言ってしまうのは、たった今彼にぶちまけてしまった性格の悪さをさらに肯定しているようで悔しかったけれど。
まあでも嘘ついたって何にもならないしな。
「じゃあ、一緒に飯でも食べませんか。俺も誰かに話聞いてもらいたかったところなんです」
「話って?」
「さっき怒られてた話」
「ああ」
そんなの、女に聞いてほしいって思うかな。
しかも初対面同様なのに。
ああ、でもきっと、ここまでさらけ出しちゃったから女として映ってないのかもしれない。
そう思ったら途端に気が楽になる。
この人の前では、もう『ショコラ』のウェイトレスを演じる必要はないわけだ。