ショコラ~恋なんてあり得ない~


「いいですよ」

「良かった。どこ行こうか。居酒屋かラーメン屋が好きなんだっけ?」

「うっ……そうですが」

「どっちがいいかなぁ、悩むね。うーんうーん」


また悩みだす。ちょっといい加減にしてー。
ラーメン屋でじっくり話出来る訳ないでしょ。


「話したいなら、居酒屋の方がゆっくりできますよ」

「じゃあ、そうしようか」


あたしの答えに、にこりと笑う。
どんな嫌味も、彼にはまったく通用しない。何だか力の抜ける人だ。


そう思って溜息をついた時、再び携帯が鳴る。

しかも、今度は親父だ。


『詩子ぉ。カレー作ってないじゃないかぁ! 今どこにいるんだぁ』


もうホントに、いちいちあたしに作らすなよ。
料理は親父の方が本職な癖に。


「うっさいわね! ちょっと用事で来たから勝手に食べてよ。今日は遅いわよ!」

『詩子! 急に用事ってなんだ。どこにいる?』

「友達の飲むの。うざいから騒がないで。じゃあね!」


ぶちっと電源を切って、フンと鼻息を荒く吐く。

それを呆れもせずに彼はにこにこ顔で見ている。
ホント平和そうな男だ。こっちから呆れた視線を送ってやる。
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