ショコラ~恋なんてあり得ない~

普段は言えないような暴言を吐きつつ、駅前の飲み屋街の居酒屋さんを探す。


「宗司さん。ここは? チェーン店で安そう。いっぱい飲みたいから味より量よ」

「ああ。いいね。入ろうか」


店員さんに聞かれたら舌打ちされちゃうそうなことも平気で言える。
これってかなり気分がいい。


 居酒屋は込み合っていたけど、二人が座るテーブルはたまたま空いてて、すぐに通してもらえた。


「詩子さんはビールかな?」

「宗司さんは?」

「俺は、……うーん。そうだなー。ビールは苦手なんだよね」


また悩みだしそうな気配を察して先手を打つ。
カクテルのメニューから一番無難そうなのをセレクトした。


「ケーキが好きな人ならカルーアミルクとか。コーヒーのカクテル」

「ああいいね。それにしよう」

「じゃあそうしましょ。すいませーん」


この仕切り体質を、存分に発揮してもにこにこ笑ってもらえるのは何だか嬉しかったりする。

おかしいな。
大嫌いな男だったはずなのに。

何だかちょっと楽しくなってきちゃったわ?

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