ショコラ～恋なんてあり得ない～

「俺、本当は小学校の先生になりたかったんだ。でも、何回受けても採用試験に受からなくってさ。
今年諦めてあの塾に入社したんだ。あの子たちは最初の生徒。だから色んな事体験させてあげたいと思って」

「ふうん」


小学校の先生か。
似合うかも。優しそうだから人気も出るかもね。
逆になめられそうな感じもしないでもないけど。


「でもさ、塾長にしてみれば、成績上げる以外の事はしなくていいって」

「え？」

「お前は学校の先生じゃない、塾の先生だ。親はそういう体験を望んで塾に通わせてる訳じゃないって。
なんかね。親の許可をもらわないで来ちゃった子もいたみたいで。苦情の電話がかかってきたんだって」

「なによそれ」

「まあ言われてみればそうかなって思って。ちょっとへこんでた」

「何素直に謝ってんのよ。いいじゃないの、いい体験だわ。学校でもしてないかも知れないじゃないの。
それとも何？　別にお金払ってるから嫌なの？」

「いや、お金はもらってないけど」

「なら、なんでそんな事で怒られなきゃならないのよ！」