ショコラ~恋なんてあり得ない~
大体、あたしは親父みたいなうだつの上がらない男も、マサみたいに甘ったるいだけの男も好きではない。
あたしの好みは煎餅みたいに塩味のきいてるピリッとした男。
そんな人と出会えたら、なりふり構わず恋愛に生きてもいいとさえ思う。
ああ、それなのにそれなのに。
こんなところでウェイトレスなんかやってたって、そんな男との出会いがある訳が無い。
「いっそのこと、年取ったらマサにこの店買い取ってもらえばいいじゃない。あたしは跡なんか継がないわよ!」
八つ当たりを一言親父に投げつける。
おのれ、あたしの人生を変えたのはアンタよ。
あの時母親について行っていれば、自分の性格に合ったような職業につけたはずだ。
こんな親父の面倒を見ていたばかりに、ほだされて調理師専門学校なんぞに行き、不器用だから絶対にパティシエールにはなるな、と太鼓判を押されながらも、辛うじて調理師免許を取るような人生を送ることになるなんて。
本当に、本当に。
ふざけんなよ、親父!!