ショコラ~恋なんてあり得ない~

ぎこちない空気に、胸が締め付けられそう。
だけどこれ以上のごめんなさいも言いたくない。

だって本心だ。

あなたが教師になりたいなら諦めずに頑張るべきだ。
あたしはそう思うもの。


 沈黙に耐えきれなくなりそうな頃、自分の家へ向かう曲がり角までついたので、慌てて一言だけ吐き出した。


「宗司さん、あたしこっちだから。じゃあ」

「え?」


いい逃げするかのように、あたしは走った。
これ以上あんな空気の中にいられるもんですか。

でも、ビール飲んでるからきついわ。
お腹もタポタポしてるし、すぐ息があがっちゃうし、何より何だかくらくらする。

どのくらい走ったか分からないけど、あまりにも頭が回り出したので立ち止まる。
ちゃんと立ち止まれているのかもよくわからないほど、なんか世界は回ってるけどね。

でももう、あの角を曲がれば家よ。

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