ショコラ~恋なんてあり得ない~


 翌朝、時間にして早朝の部類に入る午前五時、家の中には香ばしいカレーの匂いが漂っていた。

うっかり目を覚ましてしまい、軽い二日酔いで痛む頭を押さえつつ台所に向かうと、不機嫌そうな親父とご対面。

食卓には朝からカレー。
しかも、市販のルーの匂いではない、この豊潤な香り。

なにこれ、嫌み?


「おはよう、父さん」

「……おはよう」

「朝からカレー食べる元気今日は無いわー」

「何を言う! お前が昨日作ってくれないから、父さんが頑張って作ったのに」

「いいじゃん、父さん料理は本職じゃん」

「俺は、詩子の料理が食べたいんだ!」


真剣な眼差しで、そんな事言われても困るわ。


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