ショコラ~恋なんてあり得ない~


「……二十二歳の娘こき使わないでよ。あたしだってまだ若いんだからね、友達と遊んだり夜明ししたりしたいお年頃よ。もっと優しくしようよ」

「自分からそんな事言うな!」

「だって、父さんがおもんぱかってくれないからでしょ」


ああ、でっかい声出したら気持ち悪くなってきちゃった。

更にぎゃーぎゃー言う親父を放って、シンクに向かい水を飲む。


昨日はビールの為に生きてるって思ったけど、撤回します。

人間の体には、きっとお水が一番いい。


「……昨日の男、誰なんだ」


親父の声がいつもよりワントーン低い。

イヤだ、家の前でサヨナラしたはずなのに、さては見てやがったな。

怒っているのかと思ってそーっと振り向くと、視界に入ったのは涙ぐむ親父。
思わず脱力してしまう。


「まだ早いからな。嫁には出さないからな」


負け犬の遠吠えみたいな言い方を、やめてください。
< 57 / 303 >

この作品をシェア

pagetop