ショコラ~恋なんてあり得ない~
「……二十二歳の娘こき使わないでよ。あたしだってまだ若いんだからね、友達と遊んだり夜明ししたりしたいお年頃よ。もっと優しくしようよ」
「自分からそんな事言うな!」
「だって、父さんがおもんぱかってくれないからでしょ」
ああ、でっかい声出したら気持ち悪くなってきちゃった。
更にぎゃーぎゃー言う親父を放って、シンクに向かい水を飲む。
昨日はビールの為に生きてるって思ったけど、撤回します。
人間の体には、きっとお水が一番いい。
「……昨日の男、誰なんだ」
親父の声がいつもよりワントーン低い。
イヤだ、家の前でサヨナラしたはずなのに、さては見てやがったな。
怒っているのかと思ってそーっと振り向くと、視界に入ったのは涙ぐむ親父。
思わず脱力してしまう。
「まだ早いからな。嫁には出さないからな」
負け犬の遠吠えみたいな言い方を、やめてください。