ショコラ~恋なんてあり得ない~



「そんなんじゃない!」

「だって、あの男、しばらく家の前から離れなかったんだぞ。お前がさっさと自分の部屋に行ってからもしばらく見てたんだぞ」

「なんでそんなの知ってんのよ」

「俺だってずっと見てたんだ!」


自慢すんなー!!
このヘタレ親父。

ずっと見てたのだって、どうせ宗司さんの事だから、

帰ろうかどうしようかとか、道が分かんなくなったなとか、せいぜいそんな事を悩んでたに決まってるんだから!

ムッとした表情を隠しもしないで、あたしは親父に向き直る。
親父はビビったのか一歩後ずさった。

もう! 根性無しめ!!


「あの人は、お客さんよ。昨日お釣り返す前に帰っちゃったから届けに行ったの」

「じゃあなんでそのまま帰ってこないんだ」

「話が弾んだから、飲みに行っただけよ。一々口出さないでよ」

「弾んだって……ナンパになんか引っかかるなよぉ」

「そんなんじゃないってば、もう! 父さん、もう出るんでしょ?
あたしは出勤時間までもうひと眠りするから。じゃあね!!」

「待てっ、詩子ぉぉぉぉ」


ああもう、うるさい。
二日酔いの頭に響くからその雄たけびやめてください。

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