ショコラ~恋なんてあり得ない~
6 待ち人現る
お掃除用にとポリ袋にビニール手袋持参で外に出たけれど、昨日のお粗相の跡はどこにもなかった。
まさか宗司さん、お掃除してくれたのかしら。
イヤだ。何だかダジャレみたい。
一人クスクス笑いをしながら歩く。
さっきまでの不機嫌さはどこへ行ってしまったのか。
彼の情けない顔を思い出すと笑ってしまう。
何だか気分が安定してない感じ。
イヤだわ。病気か何かかしら。
平日の十時半。
太陽がさんさんと輝いて、緑がまぶしい。
長袖のシャツ一枚で丁度いい気候。
一年の中で一番好きな季節だ。
なのに、『ショコラ』が見えてきた辺りで、また心臓がドクドクし始めた。
一体どうしちゃったって言うのよ、あたし。
別に親父に何言われたって怖くないし、マサなんかこっちから、けちょんけちょんにしてやる。
あたしに怖いものなんかない。
……はずなのに。
あと一歩がどうしても出ない。
なんでよ。宗司さんはここにいないわよ。
だから、昨日の醜態になんか言われるわけはない。
何ビビってんのよ、あたし!!
自分の頬を両手で叩く。
こんな、自分らしくない自分はキライだ。