ショコラ~恋なんてあり得ない~
「い、……嫌な訳ないわ。商売繁盛で嬉しいったら」
しかし、憎まれ口というのはそう簡単には直らないらしい。
咄嗟に出てくるのは自分の言葉に幻滅する。
ああもう、あたしってどうしてこうなの。
なんで上から目線でしか、物を言えないのだろう。
「あはは。じゃあ頂きます」
宗司さんは笑ったままフォークを手に取ると、丁寧に一口サイズに切って口にいれる。
「うん。うまい」
「当たり前よ。腕は確かよ。これ父さんが作ってるの」
「うん、それに綺麗だよね。見た目の色合いとかもすごくバランスいいし」
「そうなの。このケーキはオレンジベースだからクリームも少し黄色いでしょ。だからね、かざりにミントの葉っぱをつけるんだけど、クリームをちょっと樹木っぽくしてるのよ」
「ふうん」
ケーキの話なら、色々言える。
しかもこの話題だったら、偉そうな口調にもならないだろう。
そんな安心感から、あたしはケーキについてのウンチクを熱をこめて話した。
彼は時折相槌を打ちながら聞いてくれる。