ショコラ~恋なんてあり得ない~
不思議そうに再びケーキを口元に運ぶ宗司さんを見ながら、心臓の痛みに打ちひしがれる。
こんなあたしじゃ、駄目じゃん。
好きかも、なんて思ったけど。
それ以前にあたしが好かれる訳がないわ。
だったら、これ以上関わると自分が辛くなる。
「……ごゆっくり」
体の力が抜けて、一歩後ずさる。
不思議そうにこっちに目を向ける宗司さんになんて言ったらいいのか分からない。
扉を開けるお客さんに、救われる思いがした。
「いらっしゃいませ」
あたしがあたしじゃないみたい。
結局、宗司さんが帰るまでずっと、浮かれたり沈んだりを繰り返したあたしは、
いつもの三倍ほど疲れてしまった。