ショコラ~恋なんてあり得ない~
モップを出してきて客席の端から掃除していく。
じきにコーヒーの香ばしい香りがしてきた。
優雅にカップにコーヒーを注いでる姿は品がいい紳士に見える。
さすが元はホテルのパティシエという感じ。
コーヒーの香りで、ケーキの甘い匂いが気にならなくなってきた。
もしかしたら、親父はその為にコーヒーをいれたのかな。
彼女につくるというケーキに口出しする訳にいかないものね。
クスリと笑って親父に目をやる。
あたしの視線に気付いて、親父はカップをカウンターのところに置いた。
「ありがと」
カウンターの一席に腰かけて、あたしは豊潤な香りを楽しむことにした。