ショコラ~恋なんてあり得ない~
仕事終わりは午後五時。
バイトの静香ちゃんが来た時点であたしはお役御免。
なのに、いつまでも厨房でごろごろしているあたしを、親父がいぶかしそうな目で見る。
「詩子、帰んないのか」
「今日友達とラーメン食べに行くの。父さんは自分で作ってね」
「なんだよ。また作ってくれないのか」
「毎日、父親の為のゴハンばっかり作ってられないわよ。どうせ今日も遅いんでしょうが」
「まあそうだけどなー。詩子の飯が無いんじゃつまらないな。コンビニで買ってこようかなー。父さんが高血圧で倒れたら、誰かさんのせいだぞ」
「高血圧ならケーキの食い過ぎよ」
言いたいことを言い合うあたしたちの脇を、身支度を整えたマサが通る。
いつもはTシャツにエプロンの男が、今日はきっちりYシャツとか着ちゃって。
デートの威力ってすごいわね。