ショコラ~恋なんてあり得ない~
「すいません、マスター。お先です」
「おう。楽しんでこいよ、マサ」
「送りオオカミさん頑張ってー」
「詩子!!」
赤くした頬でじろりと睨み、冷蔵庫から大きなケーキの箱を持ってマサは出て行く。
ケーキどこで食べるんだろう。
マサの部屋で?
だったら食事もそこ?
そのまま和美ちゃんも頂いちゃったり?
これは明日が楽しみだわ。
どんな顔で出勤してくんのかしら。
明日はマサより先に来なくちゃ。
「気になるのか?」
その言葉で、あたしは妄想の世界から引っ張り出された。
目の前であたしに問いかける親父の顔は真剣そのもの。
「気になるっていうか。ケーキどこで食べんのかなって思ってた」
「ああ。ホテルのレストランに頼みこんで出してもらうって言ってたぞ」
「へー、手が込んでるー」
「アイツ本気なんだな」
親父の口元から、こぼれ落ちる溜息。