ショコラ~恋なんてあり得ない~


「お前はホント康子さんにそっくりだなぁ。……元気にしてるのかな」

「元気よ、この間会った時は」

「は? いつ会ったんだよ」

「一ヶ月前」

「なんで父さんに言わないんだ!」

「なんで母親に会うのに許可取らなきゃならないのよ。
しかもあたしもう二十二よ? いちいち口出される覚えはないわ」

「くそう。いいなぁ、お前は。ああ、康子さん……」


親父はまだまだ未練たっぷりだなぁ。
なんて思ってみていると、そのうちに過去の思い出話が始まった。

勘弁してよ、くどい。
もうその話聞き飽きたわよ?


「マスター。注文です」


そこに、天の助けのような静香ちゃんの一言。


「じゃ、父さん頑張ってね。あたしもう行くわ」

「あ、詩子」

「とにかく、マサは今幸せなんだから、余計なことばっか言うんじゃないわよ、クソ親父!」

「詩子ー!!」


親父の雄たけびを後に早々に立ち去る。

いいタイミングで抜けれて助かったわ。

気分を入れ替えて、駅前へと向かう。


< 93 / 303 >

この作品をシェア

pagetop