ショコラ~恋なんてあり得ない~
「お前はホント康子さんにそっくりだなぁ。……元気にしてるのかな」
「元気よ、この間会った時は」
「は? いつ会ったんだよ」
「一ヶ月前」
「なんで父さんに言わないんだ!」
「なんで母親に会うのに許可取らなきゃならないのよ。
しかもあたしもう二十二よ? いちいち口出される覚えはないわ」
「くそう。いいなぁ、お前は。ああ、康子さん……」
親父はまだまだ未練たっぷりだなぁ。
なんて思ってみていると、そのうちに過去の思い出話が始まった。
勘弁してよ、くどい。
もうその話聞き飽きたわよ?
「マスター。注文です」
そこに、天の助けのような静香ちゃんの一言。
「じゃ、父さん頑張ってね。あたしもう行くわ」
「あ、詩子」
「とにかく、マサは今幸せなんだから、余計なことばっか言うんじゃないわよ、クソ親父!」
「詩子ー!!」
親父の雄たけびを後に早々に立ち去る。
いいタイミングで抜けれて助かったわ。
気分を入れ替えて、駅前へと向かう。