ショコラ~恋なんてあり得ない~

彼らの目にはあたしは一体どんな女の子にうつっているのだろう。
たいして話もせず敬語を使っていれば、あたしは外見上完璧に“お嬢さん”だ。
相手の話し方を見れば、そういう風に思って話してるんだろうなって事は想像つく。

誰だって最初はそう。
そのうちに本性を見せてしまうのだけど、そうするとあまりのギャップに相手の方がビビっちゃう。
そんなに態度が変わらなかったのは、マサと宗司さんくらいなもんだ。


……マサだってそういう意味では特別だ。
ただアイツには、先に嫉妬心が湧きあがってしまった。

ケーキ作りの技術に対しての対抗心。
あたしが欲してやまなかった生来の繊細さとセンス。それを兼ねそろえていたマサが羨ましかった。

だから、恋愛には発展しなかったんだろう。
好きにもなりたくなかった。そんな劣等感ばかり感じるような恋愛は嫌だ。
それに、親父の思惑通りにマサと付き合うってのもかなり嫌だしね。

なんにせよ今はマサは幸せなんだし。余計なことは考えたくない。

< 95 / 303 >

この作品をシェア

pagetop