ショコラ~恋なんてあり得ない~


「もう、早く時間経ってよ!!」


時計を見てはイライラする。

まだ三十分しか経ってない。
あと三十分何していればいい?

CDを見たり、本屋を覗いたり、試飲につられてお茶屋さんに入って、茶葉を買ってみたりして。
それでもまだ時間が余る。

なんで今日はこんなに時間が経つのが遅いんだろう。

ジリジリした気分に不機嫌オーラが出始める。

ようやく八時五分前になったときには、変な安堵感で一杯になった。


駅に向かって歩き始めると、塾の生徒らしい子供たちが数人おしゃべりをしなが
ら歩いてくる。

授業は終わったのかしらね。
でも片付けとかあるんだから、もう少しかかるだろう。

駅の構内のポスターを眺めながら、また動きの遅い秒針を苛々と睨む。
ようやく五分が経過して宗司さんの塾の方向に目をやる。
すると、すごい勢いでかけてくる青年が一人。

ちょっと、そんなに慌ててくることもないじゃないの。
汗かいたら風邪ひくわよ。

塾の先生が風邪ひいて生徒にうつしたら大変なんじゃないの?
もうちょっと考えて行動しなさいよ、大人なんだから。


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