ショコラ~恋なんてあり得ない~
そんなツッコミを口の中に繰り返していると、目の前には、息をゼイゼイときらした汗だくの宗司さん。
「は、はぁ。う、詩子さん。おまた……せ」
「待ってないわよ。そんなに」
嘘。
かなり苛々するほど待ってたけど。
「退屈だったでしょ。ごめんね」
「そんなことないって。汗ふきなさいよ」
差し出したハンカチを、目を丸くして見つめる宗司さん。
そのまま固まること数秒。
これはきっとあれよ。
ハンカチをどうするべきかとか、とかまた脳内でぐるぐる考えてんのよ。
この人が受け取るのを待っていたら、汗なんか引っ込んじゃうわ。
そう思ったあたしは、手を伸ばして彼の額の汗を拭いた。
途端に真っ赤になって、黙りこむ彼がおかしい。
背中まで拭いてやろうかしらなんて思うけど、さすがにそれは恥ずかしいから。
「背中は自分で拭いて」
「あ、ありがとう」
手を伸ばして、首から背中に向かって手を突っ込む姿が更に笑いを誘う
さっきまでの苛々気分はどこへ行ったやら。
あたしは、宗司さんのその姿を眺めているだけで何だか満足してしまった。