愛し人〜aishibito〜
廊下を一人歩いていると
曲がり角から男の医者が現れて
久美子を見る。






「久美子ちゃん」



『あ…センセー。こんにちわ』






久美子に声を掛けてきたのは
外科の部長で佐藤祐作(サトウユウサク)
仕事の出来る優しい人で
雅也の上司である。






「帰るんだね。今日は災難だったね。しばらく辛いと思うけど、ちゃんと治るから…」



『はい。利き手じゃなくて良かったなって思ってます』



「そうだね」



「ふーん…他の男の前では良い子になるんだな」



『え』



「萩原」






二人の後ろに立っていたのは
雅也だった。
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