愛し人〜aishibito〜
「………」



『こんな所まで来て何?バッグ返してよ』



「そんなに怒る事ないだろ」






雅也は久美子に
バッグを返しながら言う。






『別に……私、忙しいからもう行く』






この場から店内に戻ろうと後ろを向いて一歩足を踏み出した時
雅也は引き止めるように言った。






「この前から何怒ってんだ?」



『べ、別に怒ってないもんっ』






先日の入学式の帰り
雅也に会いに行った時の事を
触れられて
久美子は思い出したくない光景が脳裏に甦ってしまった。
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