幕末女剣士~新選組~
それから明里さんと
他愛のない話をした。
「明里さんすいません。
ちょっと厠に……」
「あぁええよ。場所わかる?」
「はい!大丈夫ですよ」
廊下に出てトイレの
ある方に足を進める。
角を曲がろうとしたとき、
誰かに腕を引っ張られた。
「うわっ!」
後ろを向くと綺麗な芸者さん
が立っていた。
「……なんですか?」
あくまで優しく問いかける。
「アンタ……新選組の女剣客?」
男装してるのにバレてる?
「そうですけど…」
無意識に刀に手を置いて
抜刀出来る姿勢になる。
「そんなに警戒せんでください。
私はアンタにお礼を言いたくて」
お礼を言われるような
事をした覚えはない。
「禁門の変の時に店の中で
倒れてた私を助けてくださった
じゃないですか……」
禁門の変のとき?
……………………
「あぁ貴女だったんですか」
思い出した。
「はい。ほんまにありがとう
ございました……」
「気にしないでください。
それが新選組の仕事ですから」
それだけ言ってその場を
離れてトイレに向かった。