ヤクザと恋愛
「……くっ!」
雄也くんは悔しそうに私から手を離した。
「井端には昔からずっと勝ってたのに…。何でセイナちゃんは井端を選ぶんだろうな。」
そう言って雄也くんは屋上から出て行った。
「セイナ、大丈夫か?」
すぐに陽くんが来てくれた。
でも…。
「あの…ありがとうございました。」
私を一番に見つけてくれた男の人に頭を下げた。
「いえ!俺は何にもしてないっすから。」
そう言って、男の人は出て行った。
「セイナ…。」
屋上には陽くんと私しかいない。
いつの間にか授業が始まっていた。
だから、学校全体が静かだった。
「どうして?」
「えっ…?」
「どうして、私が男子達に囲まれてても助けてくれなかったの?」
陽くんは黙って聞いていた。
「昨日だよ?城田さんに襲われたの。陽くん以外の男子は皆怖いの。」
私は少し涙目だった。
「一番最初に助けてくれるのは陽くんの役目でしょ?」
「泣くなよ。セイナ。」
そう言って私の涙を手で拭こうとする。