ファムファタール
序章
親はいた。
家にはいつも知らない大人がいた。
注射器が転がってた。
大人達が注射器を回してるときは、家から出て行った。
怖かったから。
親の手料理なんて食べたことない。
洗濯や掃除は、近所の人が教えてくれた。
生活するお金がなくなった。
中学を卒業したら、高校は行かせないって。
体を売れと、母に言われた。
嫌だった。それだけは、嫌だった。
私は家を飛び出した。
泊まらせてくれるような友達もいない。
交番が傍にある公園で野宿した。
次の朝、家に帰ったら両親は転がって冷たくなっていた。
薬物による死だと、分かっていた。
警察に事情聴取された。
お葬式も挙げられず、仏壇も買えない。
ぼうっとしていたら、シャッキントリがやってきた。
しらない。借金なんて。
払えないなら、私を売ると言われた。
逃げた。
車にはねられた。
私は、静かに目を閉じた。