ファムファタール
この世界に来て、一週間ほど経った。
新しい世界で始まった生活は、始終ベットの上だった。
なぜなら、重症だったから。
「ティセ、今日の気分はどうですか?」
「大丈夫」
治癒術師と言うのは、私の世界で言うお医者さんにあたるみたいだ。
ロゼは毎日私を見に来る。
イーガルは隣の部屋で仕事をしてるらしく、休憩の度にこっちの部屋に来る。
それにファズも付いてくる。
退屈はしない。メイドさんがずっと傍に居るから。
目覚めた次の日に紹介されたメイドさんは、リリーといった。
「ティセ様、今日は何を致しますか? 絵本でもお読みしますか? 陛下の猫でも借りてきますか?」
昨日までは絵本だった。
絵本で、こちらの文化を学ぶ作戦だ。
リリーはいつもニコニコしている。
栗色の髪が綺麗な、可愛い女の子。
「猫・・・でおねがいします」
「はいっ」
お願いすると、リリーは隣の部屋に入っていった。
・・・そういえば、陛下って誰だろう。
偉い人の猫なんて借りて、大丈夫かなあ。