そら。―HAPPY STORY―
(井野崎玲サイド)
「てめぇ!!」
駆けるような衝動に押され、俺は観客など脇目もふらず、駒原先輩を殴った。
水槽のガラスに背中を打って、咳き込む。
「ちょっ…玲くん!」
「お前が、何を知ってるんだよ」
駒原先輩は、スッと立ち上がった。
痛む頬を無理矢理我慢しながら、俺を睨みつけている。
香は、眠っていた。
そして、そうさせたのが駒原のトゲの言葉だと思うと、余計に腹が立つ。
「…井野崎。お前、知ってんの?香の、両親のこと。妹のこと」
「駒原くんやめて!!」