ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「ところで君は一体、誰なんだい?
いつからそこにいたのだ」
アレックスはルティナに気付くと、いきなり不躾な質問をしてきた。彼女は当然、怪訝そうな表情をしている。
「さっきからずっと居たが……それに名は既に名乗ったはずだ」
「む? 名乗っただと???
俺には全く、名乗られた憶えがないぞ」
真剣な表情でキッパリとそう返したアレックスに対して、エドが代わりに答えた。
「この方は〜ルティナ・マーキスさんといって〜魔物ハンターだそうですよ〜」
「魔物ハンター?
それは一体、どのようなものなのだ??」
(そこから説明しないといけないのか…)
正直、面倒だ。
私がうんざりして沈黙していると、エドがまた代わりに口を開いた。
「魔物ハンターというのは〜ギルドにおいて〜…(以下略)」
エドの長々しい説明が始まった。
私にとって彼の説明は、長く退屈なものでしかなかった。途中で横道に逸れるし、更に要領を得ない話が延々と続くのだ。
しかしアレックスにとっては逆にそれが、とても分かりやすいらしいのである。
なので彼への説明が必要な場合には、時間さえあれば大抵エドにしてもらっていた。
その間暇を持て余していた私は、常に携帯している懐中時計を眺めながら、意味もなく時間を計っていた。
が、2分が経過した頃になって物音に気付いた私は、ふと何気なく隣へ顔を向けてみる。
先程までのルティナは、残りの饅頭を頬張りつつ彼らを無言で見ていた。
しかし今は前を向いたままで、その空箱を力任せに千切っている。