ゼロクエスト ~第2部 異なる者
彼女はこんな不味い物を、二人分も追加で食べようというのか。

しかも私が注文したのは海鮮パスタであるが、エドはホワイトパスタ、ルティナはミートパスタである。

異種類のものを一つの皿へ同時に放り込み、更には満遍なく掻き混ぜているのだ。それらは食欲の削がれる色へと、明らかに変化しつつあった。

これは完全に怒っているのかもしれない。

「それなら、飲物はどうだい?」

「え?」

「少しくらいは腹に入れておかないと、これから先の体力が持たないぞ。旅を甘く見るな」

彼女は私たちにそう忠告すると、再びソレらを黙々と食べ始めた。

(あれ。もしかして、怒っているわけじゃない……のかな)

言葉はかなりぶっきら棒だったが、こちらを責めている様子ではないような気がする。

私はしばらく迷っていたが、折角なので彼女の言葉に従うことにした。

他の3人も頼むというので、私がマスターに声を掛ける。今までカウンターの中で新聞を読んでいた彼は、早速準備に取り掛かった。

しかしこのマスターも、ルティナ以上に愛想がなかった。

年齢は大体30〜40歳代くらい。

ドッシリとした大柄な体型に、口から顎にかけて毛むくじゃらな赤髭に覆われていた。

これで大きな荷物を背負っていたならば、完全に山男である。

或いはヒトであれば熊、魔物であればベアベアに間違われる山男、といった具合か。
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