ゼロクエスト ~第2部 異なる者
無表情な顔のマスターがテーブルの上に、無言で黒豆茶入りのカップを四つ並べていく。

メニューにはアイスとホットの両方が書かれており、私たちは4人ともホットを頼んだ。

室内は片隅に置かれている、古ぼけた小さな暖炉のお陰で少し暖かかったが、外は肌寒い。やはりこの季節、身体の暖まるものが欲しくなってくるのは自然の摂理といえよう。

目の前に置かれているものは世間一般で広まっている、ごく普通の黒豆茶。黒々とした液体が小さなカップへ、なみなみと注がれている。

黒豆茶というのは、苦味のある黒豆から抽出されるお茶のことだった。

そこへは、たっぷりのミルクと砂糖を加えるのが常識である。それが苦味と上手く調和され、芳醇な香りを漂わせるのだ。

しかし目の前にあるソレは、少し違っていた。

湯気とともに立ち上っている香りも、確かに普通のお茶である。

が、一口飲めば舌先には、ざらりとした感触が伝わってきた。それだけで言うならばまるで、砂を間違えて舐めてしまったかのようでもある。

加えてともかく苦かった。

普通なら、黒豆本来の味と上手く混ざり合うために美味しいはずなのだが、これは甘味と苦味が分離しているかのようだ。

恐らく液体が豆から抽出しきれずに、苦豆そのものも中に混ざってしまったのかもしれない。

このお茶は茶殻を完全に取り除かなければ、不味くなるのだ。
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