ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「上に居ると、こちらへ向けられる視線が気になって、かなり居心地の悪い思いをしていたからな」

と、ちらりとアレックスのほうを一瞥する。

ルティナも注目される原因が、彼だということには気付いているようだった。気付いていないのは、本人だけである。

「それより、ちゃんと説明をしてくれないかしら」

「ん? ……ああ。
あたしたちの出陣は、日の落ちる夕方頃だ。それまではゆっくりと、身体を休ませておくんだな」

「いえ。討伐隊ではなくて、モンスター・ミストの話よ。
モンスター・ミストを破壊する、本当の理由が聞きたいの」

私は彼女の右目を真っ直ぐに見据えた。

「それは世の人々を助けたいと願う、善意の想いからではないか。さっき話していたことを、君は聞いていなかったのか?」

「じゃなくて……っていうかアレックス、今は黙っていて。ルティナと話しているんだから」

アレックスが言っている理由は、エドが吟遊詩人として話の内容を少し誇張し、いつもの思い込みで間違った認識をしているだけにすぎない。

私はルティナの口からは一言も、そんな話を聞いてはいないのだ。
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