ゼロクエスト ~第2部 異なる者
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日も落ちかけてきた頃になって、私たちは村出入り口の集合場所に辿り着いていた。
ルティナの話によれば、日が山の向こうへ完全に隠れる瞬間が、私たちの出陣の合図だという。
周囲にいるのは、如何にも屈強そうな術士たちばかりだ。
皆一様にして殺気立っており、私たちのような見習い風情の姿は流石に見かけない。
私は精霊術士だからまだ良いが、吟遊詩人であるエドは完全に場違いだった。
パーティ内で支援援護を担当している芸術士が、このような現場に参加することなど滅多にないのだ。
芸術士が参加する場合は主に、ギルドへ戻ってきた術士たちを治療する、救護要員としての役割である。
そのように、かなり浮いた存在の私たちだったが、幸いなことに周囲では誰も気に咎める者などいなかった。
恐らく皆、目の前にぶら下がっている餌のことしか見えてはいないのだろう。
討伐隊に参加するのは、その日暮らしのためや修行目的などといった理由が大半を占める。
賃金はかなり安いが手軽に路銀を稼げるし、更にスキルアップを図るには丁度良い仕事なのだ。
ただし自分の身は、自分で守らなくてはいけない。
乱戦が予想されるからである。
個々の能力がある程度高くなければ、生き残れないというのだ。