ゼロクエスト ~第2部 異なる者
落ち葉の上で四肢をついた私は、再び抗議の声を上げながら肩越しに振り返る。

すると、私が先程まで立っていた地面の落ち葉が、下から勢いよく吹き上げられるのが目に入った。

それらは天高く舞い上がると、間もなく引力で下へと落ちてくる。

このままでは落ち葉まみれになることにようやく気付いた私は、慌ててその場から離れた。

「くくく……よもや二度までも回避されるとはな」

不気味な笑い声とともに現れたのは、昼間私たちを襲ってきた魔物だ。

但し今はその形態ではなく、最初に遭ったときのように人間の姿に変化している。

「あんたは確か……ボンバー!!!」

その姿と声が現れた途端、私は思わず指を突きつけていた。

しかし。

「ボンバー……とは何だ」

「あ、あれ、違った?
……じゃあ、レバー!」

「……だから何だ、ソレは」

「と、これも違うか。
ええい、それなら、ビバ!!!」

「………………」

魔物は険しい顔付きで、私を睨んできた。そこから、無言の威圧感が感じ取れる。

その様子から私は確信していた。

適当なアタリで名前を言ってみたところ、全てがハズレだったという事実を!

(そういえば、もう一匹はどうしたのかしら)

昼間は二匹いたはずだが、私の見た限り、ここにいるのは一匹だけだ。

だが油断はできなかった。

ただ姿を見せていないだけで、こちらの様子を何処からか窺っているのかもしれない。もしかしたらこの魔物と同様に、地面の下へ潜んでいる可能性もある。

私が緊張感を崩さずに魔物の行動を見守っていると、短剣数本を懐から取り出すのが見えた。

そして。

「死ね!」

その叫び声と共に、問答無用でこちらへ突進してくる。
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