ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「花? この時期に??」

私は眉を顰めていた。鮮やかな花々が今の寒い時期に、咲くはずがない。

しかも―――――。

「何で昼間?」

上空には雲一つない青空が広がっている。辺りも明るい。

今は「夜」のはずなのに、だ。

周囲にはこの色彩空間を取り囲むように、青々とした樹木も立ち並んでいた。

この光景を見れば、少しくらいは暖かくても良さそうだが、妙に肌寒かった。

私は戸惑っていた。が、今の状況を把握しておかなければ、何も解決はしないのだ。

そう自分を奮い立たせた私は、足首ほどの高さに咲く野花を踏みしめ、慎重に歩みを進めていた。

だが何故だろうか。

足を一歩前へ出す度に、全身が重くなっていく。

視界も徐々に狭まってきているようだ。足取りさえも覚束無くなっている。

気が付くと私は、咲き誇っている花々へ顔を埋めるようにして、地面に倒れ込んでいた。

全身に力が入らない。それに起き上がろうという気持ちも、何故か全く湧いてはこなかった。

(あー、このまま寝ちゃおうかなぁ)

いろいろと面倒くさい。

大体こうやって、考えること自体が面倒だ。それにこの体勢も、何だか妙に心地良い感じだし。

私は柔らかいクッションへ身を委ね、そのまま眠りに入ろうと目を閉じたのだが。


「やはり人間か」


頭上で声が聞こえてきた。
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