ゼロクエスト ~第2部 異なる者
第4章 追跡者2(ルティナ編)

第1節 悪夢




炎―――。



辺り一面、火の海だった。

幼いあたしがその中を彷徨っている。





(お父さん、お母さん……何処?)

あたしは何度も瓦礫につまずき、充満している煙で噎せ返りながらも、両親の姿を探し求めていた。

その最中、破片か何かに引っ掛かったのだろう。既に片方の靴が脱げ、足の裏も血だらけになっていた。

歩く度に痛みも伴ってきた。だがあたしは、沸き上がってくる不安感とともに、小さな身体で必死に耐え続けている。

しばらくすると、煙の隙間から黒い影が姿を現してきた。

少し浅黒い日焼けした肌に、漆黒の流れるような長髪。

彫りの深い端整な横顔。

見知った顔だ。



ゼリュー。



一人心細かったあたしは安堵して、その男に駆け寄ろうとした。

が、ここで異変に気付く。

彼はそこへ佇んだまま、足元をじっと凝視していたのだ。

視線の先を何気なく辿ったあたしは、それが視界に入った途端、足を止めていた。

そこには折り重なるように倒れている、両親の姿があった。

側にいる彼の指先からは、滴り落ちる赤い液体。
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