ゼロクエスト ~第2部 異なる者
―――て、いや!
……勿論、そんな理由ではなく。
彼女は何処にでもいるような、普通の少女にしか見えない。
乱暴な行動を起こすとは思えないほど、外見上では十代半ばくらいの、ごく平凡な少女だ。
「おい、どんな起こし方をしているんだ。二人とも鼻から流血しているぞ」
「あら、手っ取り早く目覚めさせるには、この方法が一番効果的なのよ。
故郷ではこのやり方で、なかなか起きてくれない父を毎朝起こしていたし。
でもシーツも汚れちゃうから、毎日の洗濯が大変なのよね」
振り向いたエリスはにこやかな表情で、平然とそんなことを言ってきた。
これでは娘に起こされる父親のほうも、毎日が災難だ。
永遠に目覚めなかったらどうする――というようなことを、彼女は考えたことがないのだろうか。
(てことはまさか、あたしもさっき目覚めていなかったら……)
ようやく目を覚ました彼らを眺めながら、まだぼんやりしたままの頭で考える。