ゼロクエスト ~第2部 異なる者


◇ ◇ ◇


(それにしても)

あたしは隣にいるエリスを横目で一瞥した。

彼女は先程から術士たちの集まっている人混みを、物珍しそうに眺めていた。

(あんなに討伐隊への参加を嫌がっていたわりには、時間になったらきっちりと起こしていたな)

昼間魔物の結界が破壊された時、あたしはこの3人の誰かがやったのだと確信した。

あの中にいたのは、あたしと戦っていた魔物二匹以外には、彼女たちしかいない。

結界を破壊する瞬間は見ていなかったが、それに間違いはないだろう。

だからあたしは無理矢理、3人を討伐隊に参加させることにした。

我ながら多少強引な方法だったとは思うが、今のあたしには手段を選んでいる余裕がなかった。

討伐は朝昼晩、三交替での編制となる。

今回現れたモンスター・ミストが、それほど大きなものだということだ。

あたしたちの出発は夕方だった。

本当ならば、魔物の行動力が比較的鈍る「朝」の出陣が良かったが、こちらには選択権がないため仕方がない。

それまでの間に少し時間があったため、あたしたちは宿屋で仮眠を取っていた。

宿はこの前ギルドに紹介してもらった、喫茶店のマスターが兼営している所だ。

他の宿屋は満室だったが、そこは店の看板を目立つ場所へは掲げていないためか、運良く空き室があった。

「ねえ、ルティナ」

あたしが腕を組んでじっと考え事をしていると、エリスが不意に話し掛けてきた。
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