ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「―――だからね、いくら私が防御術を使えたとしても、あの中で戦うことは初心者の私では難しいのよ」
エリスがアレックスに対して、何やら言い聞かせているような声が聞こえてきた。
途中の会話を聞いてはいなかったが、何か揉めているのか。
あたしはここで口を挟んだ。
「あんたたちは、戦闘に参加しなくていい」
その言葉を聞いたエリスは、大きな翠瞳を更に見開き、こちらを凝視してきた。
その表情から「何で??」という問い掛けが聞こえてきそうだ。
やはり彼女は自分たちが討伐隊に参加する、当初の目的を忘れているらしい。これはどうやら、それを思い出させる必要がありそうだ。
しかし脇からエドが、陽気な音楽を鳴らしながら言ってくる。
「僕とエリスさんは〜結界術を〜破ることができませんよ〜」
その言葉の意味を理解するのに、数秒の刻(とき)を要した。
「おい、結界は3人とも破壊できるんじゃなかったのか?」
あたしの問い掛けに、エリスも即座に否定する。
サラはあの時に言っていた。
『結界を破壊できるのは、その3人』だと。
だがよく考えてみれば、奴は魔物だ。あたしに対して真実を言うとは限らない。
或いはその情報自体が、何らかの罠だという可能性もあった。
何故そのことに今まで気づきもしなかったのか。
魔物ハンターである、このあたしが。
本来なら魔物の言葉など、耳を貸さないが普通だ。
その時のあたしは、ヤツを倒すことだけで頭が一杯になり、正常な判断力が鈍っていたのかもしれない。
だが今更そんなことを考えていても仕方がなかった。
もう後戻りはできない。
それにあたしには、どうしても成し遂げなければならないことがある。
例えそれが罠だとしても、前へ進むしかないのだ。