ゼロクエスト ~第2部 異なる者
しかしそれもつかの間。
腰に携えている剣を直ぐに引き抜くと、右腕を高々と掲げて宣言する。
「だが! 俺は諦めないぞ。
例え腕一本へし折られていたとしても、奴らを倒してみせる!
それが精霊に課せられた、英雄としての俺の使命だっ!!」
「待て待て待て。その前に、誰かが来るようだ」
あたしは今にも、勢いで飛び出そうとしている彼の襟首を捕まえると、そのまま奥へ引き摺り戻した。そして後ろから口を塞ぎながら、身体を羽交い締めにする。
ここで誰かに見つかるのは面倒だった。先程のような事態は、成るべくなら避けたい。
今回あたしが討伐隊に参加した目的は『モンスター・ミスト』の中に入るため、そしてヤツを倒すためだ。余計な戦闘で、体力や時間を取られたくはないのだ。
程なくして、金属の触れ合う音と、人の話し声のようなものが聞こえてきた。
「この付近で、人間に変化した奴も潜んでいるらしいぞ」
「ああ。本人は人間のつもりらしいが、どうやら人間離れした容姿の奴らしい」
(人間離れ……)
あたしは腕の中で抜け出そうと必死に藻掻いている、アレックスの後頭部を見上げた。
確かにこの顔立ちならば、人間離れしているとは言えなくもないが―――。
その声主たちは、互いに短い会話を交わし終えると、それぞれ相手にしている魔物と戦いながら左右へ散っていった。
(もう既に、変な噂が広まっているようだな)
このような場所であっても、術士同士で互いの状況を交換し合い、戦闘を進めていくことも珍しくはない。
無論、余裕のある状態でなければ出来ないことではあるが。
「いきなり押さえ込んでくるとは、非道いではないかっ!」
あたしの腕からようやく抜け出せたアレックスは、早速抗議をしてきた。
腰に携えている剣を直ぐに引き抜くと、右腕を高々と掲げて宣言する。
「だが! 俺は諦めないぞ。
例え腕一本へし折られていたとしても、奴らを倒してみせる!
それが精霊に課せられた、英雄としての俺の使命だっ!!」
「待て待て待て。その前に、誰かが来るようだ」
あたしは今にも、勢いで飛び出そうとしている彼の襟首を捕まえると、そのまま奥へ引き摺り戻した。そして後ろから口を塞ぎながら、身体を羽交い締めにする。
ここで誰かに見つかるのは面倒だった。先程のような事態は、成るべくなら避けたい。
今回あたしが討伐隊に参加した目的は『モンスター・ミスト』の中に入るため、そしてヤツを倒すためだ。余計な戦闘で、体力や時間を取られたくはないのだ。
程なくして、金属の触れ合う音と、人の話し声のようなものが聞こえてきた。
「この付近で、人間に変化した奴も潜んでいるらしいぞ」
「ああ。本人は人間のつもりらしいが、どうやら人間離れした容姿の奴らしい」
(人間離れ……)
あたしは腕の中で抜け出そうと必死に藻掻いている、アレックスの後頭部を見上げた。
確かにこの顔立ちならば、人間離れしているとは言えなくもないが―――。
その声主たちは、互いに短い会話を交わし終えると、それぞれ相手にしている魔物と戦いながら左右へ散っていった。
(もう既に、変な噂が広まっているようだな)
このような場所であっても、術士同士で互いの状況を交換し合い、戦闘を進めていくことも珍しくはない。
無論、余裕のある状態でなければ出来ないことではあるが。
「いきなり押さえ込んでくるとは、非道いではないかっ!」
あたしの腕からようやく抜け出せたアレックスは、早速抗議をしてきた。