ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「成る程。これが例の何とかミストとかいうやつか」

アレックスはモンスター・ミストの前へ立つとしばらく観察していたが、おもむろに右手を前へ突き出した。

するとそれを中心にして、霧は逃げるように外側へ弾かれていく。

その部分だけ穴が空くような形になった。

昼間戦った魔物の結界は完全に破壊できたが、どうやらこの場合、そこまでには到っていないようだ。

だが中へは入れそうだった。

それだけでもあたしには、十分役に立つ。

目的はあくまでも、中に居るヤツを倒すことだけだからだ。



―――と、背後の森から爆発音のようなものが聞こえてきた。

かなり近い。何処かの術士が付近で、戦っているのかもしれない。

「よし、俺も加勢に行くぞ!」

「って、待てぃッ!
こっちの仕事のほうが最優先だ!!!」

同じように音を聞き付けたアレックスが、早速駆け出そうとしたが、寸前で押しとどめた。

なんて血の気の多い男だろう。

「む、仕事だと?
俺に何をさせるつもりだ」

「簡単なことだ。そこから後ろへ移動してみてくれ」

「? ……こうか??」

彼は言われるまま素直に移動した。

丁度霧の中へ身体ごと、突っ込むような格好になる。

案の定それは彼を避けるかのように、周囲へ弾かれていった。

先程手を突っ込んだ時よりも、遙かに大きな穴が空く。
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