ゼロクエスト ~第2部 異なる者
第3節 彷徨う者たち
一面の白濁色。
身体全体に纏わり付くような、ヒンヤリとした空気。
ここにあるのはそれだけだ。
周囲は何も見えず、視界が非常に悪い。方向感覚もまるで役に立たない。
加えてこの中には、強い気配が充満していた。
それは外にいた時から感じていた気配。無論、あたしの眼もずっと疼いている。
そのせいか、他の気配も感じられなかった。これでは一緒に入ってきた敵が何処に潜んでいるのかさえ、探ることもできないだろう。
それにもう一つ、気がかりなこともある。
実は結界が閉じる寸前で、正体不明の黒い影を目撃していたのだ。
攻撃から逃れるために後ろを振り返った時、それらが数体ほど中に飛び込んできたのが見えた。
その時には駆けだしていたから遠くて確かめられなかったが、あたしたちの他にも何者かが入り込んでいる。
だがここがモンスター・ミストの中である以上、いつまでもこの場所で立ち止まっているわけにはいかなかった。
それらの問題は一先ず置いておくとして、今は慎重に歩みを進めるしかない。