ゼロクエスト ~第2部 異なる者
一体どのくらいの時が経っただろうか。
時計を持っていれば確認できるのだろうが、あたしは時間に縛られたくないほうだから、普段から持ち歩かない主義だ。
それでもしばらく手探りで歩いていたのだが、不意に微かな音が聞こえてきた。
立ち止まって耳を澄ませてみれば、それは何かのメロディのようでもある。
(敵? ……罠か?)
ここはヤツの空間。
当然あたしたちが中へ入り込んだことも、既に把握しているはず。
とはいうものの、変わらない風景の中を歩くのにも、流石に飽きてきたところだ。
例え罠だとしても、ここから抜け出せるのであれば何でも良い。
しばらくすると前方からは、明かりも見えてくる。
点滅して光っているようだ。
どうやら音はその方向から聞こえてくるらしい。
徐々に視界も鮮明になってきた。
そこには辺り一面、緑色の景色が広がっていた。
霧もいつの間にか晴れていて、あたしは少し拓けた場所に立っていた。
足下には膝丈ほどの草が、地面を覆い隠すかのように生えている。
この場を囲むように、鬱蒼と生い茂っている木々も立ち並んでいた。
周囲をざっと見回しただけでも、季節感が狂っているのが分かる。
上を見上げてみると、青空も広がっていた。
季節ばかりか、時間までも狂っていやがる。
ここはやはり、結界の中なのだ。