ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「そうだ。このような時だからこそ、仲間を信頼せねばならぬのだ。
君は仲間である俺のことを、これほどまでに想っているというのに……なのに俺は君のことを……済まなかった。
ここは君に任せるべきだったな」

「ま……あ、分かればいいんだ」

あたしは近づいてくる、一点の曇りのない澄んだ碧瞳から顔を背ける。無駄に綺麗な容貌は、何となく苦手だ。

本当のことを言うとあたしには、アレックスがどうなろうと知ったことではなかった。

それにいつもなら「邪魔だ、そこを退け!!」の一言だけで済むところだ。

しかし彼を相手にしていると、怒るのが何故か馬鹿らしくなってくる。

だから適当な御託を並べてみたのだが、まさかこんなつまらない言葉で、あっさり納得するとは思わなかった。

なんて単純な男だ。

「……貴様ら、さっきから何をコソコソとやっている」

声の主を見てみれば、あたしよりかなり苛立った顔付きをしていた。

それなのに会話が終わるのを待っていたとは、魔物のくせに律儀な奴。

「全員まとめてかかってこいと言っているんだ。
そのほうがこちらとしても余計な手間が省けるし、仕事も早く片付けられるからな」

どうやらコイツも『危険』なこの場所から、直ぐにでも立ち去りたいらしい。

あたしも精神力で今の状態を何とか保ってはいるが、長時間は持たないだろう。
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