ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「偉い自信だな。だが先鋒はあたしだ」

「ほう? 他の二人は介入しないのか」

「あんたがあたしを指名したんじゃなかったのかい」

「うむ。それに1対3の戦いになると不公平であり、術士としての誇りをも穢(けが)すことになってしまうからな」

「……………」

あたしはアレックスを無視し、無言で目の前の敵を睨み付けた。

戦闘時において冷静さを欠き、尚且つそれを相手に悟られてしまったなら、確実にこちらが負けるだろう。

「ところで、もう一匹はどうしたんだ?
姿が見えないようだが」

「ああ、ボブのことか。さあ、どうだったかな」

(何かを企んでいるのか?)

その表情を見ても、真意を量ることができない。

それに蔓延する気配が邪魔をしていて、周囲を探ることも難しい。

だが条件なら相手も同じ。

ならば。

あたしは左眼帯に右手を添え、同時に左拳も強く握り締めた。

こちらとしても、戦闘を長引かせたくはなかった。

それに余計な術力も使いたくない。

もし敵が何かを企んでいたとしたら、実行させる前にこちらから仕掛ける!



あたしは相手のほうへ真っ直ぐに向かって、地面を蹴った。

「強硬風拳(フォール・デュー・ヴィン)!」

左拳に精霊力を注ぐ。

相手がそれに対して口角を上げながら、いつものように身構えているのが目に入った。

この術は奴の目の前で何度も放ち、その度に受け流されている。

敵にとっても「何を今更」という感じだろう。

あたしは近づくにつれて徐々に術力を上げていった。

そして拳を放つ直前で、左眼を『解放』した。
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