ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「! 貴様、その眼は!?」
奴は驚きの声を上げたがそれには構わず、あたしは左拳へ集中的に術力を注ぎ続けている。
敵は次の行動へ移そうと身体を動かした。
が、それは既に計算済みだった。
だからこそ、このタイミングでソレを外したのだ。
あたしは奴の鳩尾へ向かって拳を叩き付ける。
その手前では、2本の短剣をクロスさせるように防御(ガード)していた。
いつもならこの攻撃は通用しない。
しかし。
術が施してあり、通常より強固なはずの剣中心部は、拳に纏う風の威力で粉々に砕け散っていた。
耳元では、まるで複数の狂犬が激昂しているかのような、唸り声が聞こえている。
自分自身でさえも、その威力に吹き飛ばされそうだった。
当然左拳も、意図しない方向へ持って行かれる。
全身の骨も内側から軋んでいく。身体も引き裂かれそうになる。
だがあたしは辛うじて、それらを押さえ込んでいた。
そして奴が次の行動に移す直前で、そこへ叩き付けていた。