ゼロクエスト ~第2部 異なる者
もうすぐ。
もうすぐだ。
長年の悲願を果たす時が、ようやく来たのだ。
背後で二人が何かを言っていたようだ。
だがあたしは振り向かず、足を止めることもなかった。
周囲で変わることのない緑色風景が、一段と加速していく。
そして不意に途切れたその先には―――。
―――ヤツだ。
ヤツがいた。
漆黒の髪。
切れ長の瞳。
面長気味な彫りの深い端正な顔立ち。
浅黒い肌。
問い詰めねばならない。
何故、友人でもある両親を殺した?
何故、村に火を放った?
何故、人の姿であたしたちの前に現れた?
何故、あたしの眼を封じた?
何故、『母親』を裏切った?
だが12年前と変わらぬその姿を見た途端、それらが綺麗に無くなっていた。
今まで積み重ねてきた想いごと、頭の中から全てが吹き飛んでいた。
代わりにヤツの名を叫ぶ。
腹の底から叫んでいた。
そしてあたしは―――。