ゼロクエスト ~第2部 異なる者
「え……ええと、それは……」

私は迷っていた。本当のことを言うべきかどうか。

いつの間にか入り込んでしまっている私だったが、モンスター・ミストの結界を解いたのはアレックスだと思っている。そしてルティナも同行しているはずだ。

何故なら彼が誰の干渉も受けず、一人でこの結界を破るとは考えられないからだ……多分。

勿論ここへ来る途中で彼らに出会わなかったし、その場面を見た訳でもなかったが、何となくそんな気がする。

それに目の前にいる魔物は恐らく、上位クラスだ。

何故そう断言できるかといえば、先程私にかけた術のようなもの。あれは何らかの精霊術だろう。

そして先日出遭った上位クラスの魔物――サラが唱えていた術文と、似たようなものも唱えていた。

しかもこの魔物、サラと顔立ちや瞳の色が似ているような気がする。

もしかしたら同じ種族なのかもしれない。

サラには私にもアレックスと同じ能力、『精霊の加護』が付いていると思い込ませていた。

そして恐らくはそのお陰だと思うが、私たちは殺されずにすんだのだ。

だからもしかしたら今回も―――。



「この結界を破壊できるのは、俺が許可しているモノと、そしてもう一つ。
術効力を無効化できる能力――今のところ考えられるのは、精霊が英雄に与えたと言われている『精霊の加護』のみ」
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