ゼロクエスト ~第2部 異なる者
魔物にはあるが、ヒトにはないもの――。
術士が術発動をするためには、精霊石が必要だ。
しかし魔物はそれに代わるものを、生まれつき体内に宿している。
だからこそ術文や精霊石を使用しなくても、術が使えるのだ。
精霊石が変換できるのは、大気中の精霊力と術士本人の精神エネルギーだけである。
しかし魔物の場合は、生まれつき持っている精霊力――体内精霊力によって、それらを変換する。
そして更に魔物は、瘴気をも取り込むことができる。これも体内精霊力によって、意識的に蓄積しているそうだ。
下位クラスは獣なみの脳でしかないため、本能の赴くままに蓄積・放出を繰り返すが、中位以上はその能力を上手く利用し、術発動しているという話だった。
より多くの瘴気を蓄積できれば、それだけ強さが増す。
その容量(キャパシティー)の度合いによって、魔物の位(くらい)というものも自然と決まってくる。
――と、無論これは術士講義での父からの受け売りであるが。
「だが多くの瘴気を取り込めばいいというわけではない。
容量以上のものを取り込めば、当然処理しきれずに身体(うつわ)は破壊される。
身体の容量というのは最初から各々、決まっているものだからな」
「まさか、この魔物は」
バラバラに引き裂かれ、方々に散った屍体。
ともすれば。
「それ以上のものを取り込もうとして自滅した、成れの果てだ」
彼は相変わらず意識を瘴気の球に集中しながらも、淡々と答えていた。