ゼロクエスト ~第2部 異なる者
しかしこの話には、いくつか疑問点が湧いてきた。

「下位クラスならともかく、この魔物は中位クラスなのよ。
そんなに簡単に、自分の持っている容量を見誤るかしら」

「万能薬も多く摂取すれば、毒となる」

「え?」

「魔物にとって瘴気というのは、花の蜜や中毒性のある薬と同じようなものだ。
だから下位クラスは濃度が高ければ敏感に察知し、本能的にそこへ群れたがる。
ところが中位以上はそのような場所を、意識的に避ける傾向にある。
中には例外もあるが、殆どの奴らには『理性』があるからな」

傲慢でプライドの高い者が、理性を失い自滅する。

彼らが如何にそれを屈辱的なことと捉えているのか、人間である私でも安易に想像がつく。

「それにこの場所には、濃度の高い瘴気が漂っている。
中位クラスも人間と同等の感情や感覚があり……どちらかと言えば、人間に近いかもしれないな。
故に長く留まっていれば、例え魔物といえども精神を狂わされる」

「けど、濃度の高い瘴気を魔物は、自分の体内にも宿しているのよね」

「魔物は体内に宿る精霊力を使い、瘴気を『エネルギー』に変換して蓄積しているだけだ。
もっとも、時々はその残りカス――ヒトにとって不快感の要素が含まれる『気』を、外部へ直接吐き出すことはあるがな」

それはもしかして私が、幼い頃に浴びた瘴気のことだろうか。

……ていうかアレって、瘴気の残りカスだったのか。
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