ゼロクエスト ~第2部 異なる者
ドラゴン―――。
確か魔王伝説ではお供として、一緒に生命の樹へ乗り込んだという言い伝えがあったはずだ。
そしてトイーズダレマ大陸にある、世界で最も大きな山脈――名称は忘れてしまったが――の山奥に、今でも生息しているという噂もあった。
しかしこれも魔王同様、伝説内での魔物だ。こちらも実際に見た者はいないと聞く。
ドラゴンというのは上位クラスに属し、巨体で術力も桁外れ。
しかも精霊術とは別に特殊能力もあり、千里眼まで持っていると言われている。
そんな強大な能力を持つ魔物が、今でも何処かでひっそりと暮らしているだなんて、私にはとても信じられなかった。
本当に実在するのだろうか。時間さえあれば、更に深く追求したいところだ。
「傀儡は俺たちとは違って、大気中の瘴気を自ら取り込むことができない。
故にその影響力を殆ど受けないモノだ」
「なら……それなら、あなたはどうなの?
傀儡でないあなたは、何故平気なの?」
「浄化作業者自らが瘴気に侵されるなど、本末転倒というものだろう。
その件に関しては、俺も既に予防線を張っている」
予防線というのはもしかしたら先程、私が彼に触ろうとした時の……あの雷のような衝撃がそうなのだろうか。
「俺に訊きたいことはそれだけか?」
「あ、待って。一番肝心な質問よ。
何でこんな事態になったの?
私がこの魔物を招き寄せたことと、一体何の関係があるの?」