ゼロクエスト ~第2部 異なる者
ただ感覚的にいって、ほんの十数秒程度のことだと思う。
それは直ぐに収まった。
気が遠くなる寸前で耳鳴りが消え、徐々に力が戻ってくるのを感じていた。
私はようやく顔を上げる。
焦点が定まらなくなりそうになる目を必死で堪え、まだ痛む腕を押さえ込みながら、周囲を見渡してみた。
最初に飛び込んできたのは、目映い発光。
ゼリューが輝きに包まれていた。そして飲み込まれ―――瞬間で消える。
まさに消えた。消失したのだ。
輝きが増し、その姿を目視で捉えることが出来なくなった途端、光もろとも煙のように消え失せていた。
私は呆気にとられていた。
だが疑問に思う間もなく。
耳元をくすぐるような音。
今まで感じられなかった動く気配。
頬を撫でるような冷たい感触。
風だ。冷たい風が全身を通り過ぎていく。
周囲もいつの間にか暗くなっていた。だが完全な闇ではない。
徐々に薄くなりつつある星々の瞬きと、ぼんやりとした明るい空。
先程まで生い茂っていた木々に葉はなく、そのシルエットを浮かび上がらせている。
(これは……)
今の季節。見慣れた光景に思い当たる。